別に目新しいことは言っていない.98年の総括といったところなのだが,核
保有国の軍縮が足りない,CTBTの発効条件である44か国批准に努力するつも
りだ云々といいながら,例えば,
毎日新聞:米国の「核の傘」の下では説得力に欠けます.
外相:日本の平和と独立を守るために必要だ.
と答えられると,一気に,どこもかしこもそう言うのなら,結局「傘」はどこ
からも無くなるまいと思わせる,格好のインタビューになっている.
米軍備管理軍縮局(ACDA)と米広報・文化交流局(USIA)が1999年
に廃止されることになったという記事.
人員削減した上で,両局の機能は国務省に統合されることになっているが,こ
れら2つの組織の独立性が失われることにより,米国の外交政策にはなんらか
の影響が出るものと見られている.
ACDAは,軍縮専門で,冷戦時代,SALT I(戦略兵器削減条約)などを交渉
していた時代には「花形」(琉球新報記事,配信元共同通信)的存在で,数多
くの軍縮問題専門家を輩出したことでも知られている.
クリントン政権下での93年,国務省等が核実験再開を訴える中,この局が
「実験凍結は継続すべきである」との主張をまげず,米国がCTBTに合意する
道を拓いたのはこの局の踏ん張りであった由.→CTBT
こうした機関が無くなることは,この先何か象徴的なことになったりするのかも...
ロシア原子力省のリャベフ第一次官が,極北のノバヤゼムリャ島の実験場で今 年9月14日から12月13日までの間に,計5回の臨界前核実験を実施したと述べた.最新は12月8日. 一連の実験は完了したものの今後も同様の実験を継続 する方針を明らかにした.
アメリカと同様,サブクリミナル(臨界前)核実験は,CTBT(包括的核実験 禁止条約)に違反していないと主張している. イラクの問題もあり,結局,アメリカに張り合うロシアの構図がある限り,核 兵器廃絶は遠のく.
現在,広島市の平和記念公園の対岸にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑が来年の8 月6日をめどに公園内に移設される方針が広島市長によって明らかにされた.
慰霊碑は,在日本大韓民国居留民団(民団)によって,1970年に現在地に建 立されたが,公園の外にあることから,民族差別の象徴と言われてきた.
移設が適わなかったことには,広島市と民団,というより日本と朝鮮の問題も あったが(当初,市は公園内移設を認めていなかった),民団と朝鮮総連,つ まり南北朝鮮の問題があった.今回の移設は,南北統一の碑という目標を先送 りした形で,現在の慰霊碑のままの移設になる.
国が,広島市に原爆死没者追悼平和祈念館を,平和記念公園内に建てる工事着 工が認可された.1999年冬から工事を始め2002年の開館予定.長崎にも建 設予定.
こういう建物の建設も「唯一の被爆国」としては必要なのかもしれないが,そ の前に,例えば被爆者の原爆症認定等の膠着状態を改善することなどはどう なってしまうのか.
アメリカ・エネルギー省が,水素爆弾の威力の高めるための核兵器用トリチウ
ム(三重水素)の生産を,商業用原子炉を使って再開すると発表.
場所は,テネシー渓谷開発公社(TVA)所有の商業用原子炉の予定.
核兵器用トリチウムは,冷戦時代には,サウスカロライナ州の軍事用原子炉で
生産してきたが,1988年にこの原子炉を閉鎖,生産停止した.しかしトリチ
ウムは毎年5%ずつ劣化が進むため,核兵器を減らしていったとしても2011
年には取り換え用の分が必要になるとして再開する.
軍事用原子炉での生産でなく,商業用原子炉を軍事利用については,今年初
め,米下院が反対決議を採択したが,上院で否決されている.
「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」が18,19日に広島で開催され
た.
主催は,広島平和研究所(明石康所長),日本国際問題研究所主催.
第1回目は8月に東京で開かれている.来年ニューヨーク,東京で会合が開か
れる予定.このフォーラムでの成果は来年8月に提言という形でまとめられ
る.
記事によれば,これに先立つ12日,「核兵器廃絶を求める広島・長崎市民の
集会」があり,その中で,外務省軍備管理軍縮課から出席していた事務官に向
けて,「なぜ究極的核廃絶にこだわるのか」といった質問が出た模様.
「究極的」といいつつ,臨界前核実験の黙認,核抑止力の必要性容認などの姿
勢を取る政府の意図は一体なんなのかということだ.
また,時を同じくして起こったイラク空爆の事態について各代表が意見を述べ
ているが,結局,アメリカのシンクタンクは「イラクは国際的責任を果たして
いないから空爆やむなし」で,ロシア,エジプトなどは批判的であり,「大国
が小国を攻撃することに,核不拡散体制の不平等性がある」といった,従来通
りの見解になっている.
各種会議会合も,なんとか,その国を離れて発話できる人が揃って来ないとど
うしようもないのかもしれない.
内容については別途.→
→UNSCOMと,イラクvsアメリカ
→Spadina
Journal Vol. 6 <1998/12/11-12/17>記事
12月11日,広島で被爆した京都市の男性(72)が,肝機能障害などの症状は原爆の放射
線によるものだとして国に原爆症の認定などを求めた訴訟で,原爆症と認定された.
この男性は,1968年に肝機能障害の診断を受け,1985年厚生大臣に原爆症認定の申請
をしたが却下され,翌年提訴.そして今.ということは,診断から30年,提訴から12
年かかっていることになる.丈夫な人も具合の悪くなりそうな年月だ.
京都地裁の大出晃之裁判長は原告側の請求を認めて国の原爆症認定申請却下処分は違
法だとして,同処分を取り消し, 医療特別手当に30万円の慰謝料を加えた計約470万
円の支払いを命じた.
この裁判では,国が認定基準の根拠として使っている被爆線量推定方式(DS86)の妥
当性も否定されている.DS86による認定は,人体への放射線の影響を過小評価してい
るとの非難が相次いでいる.ここで国が控訴しなければ,今後原爆症認定の数は増え
てゆくものとみられる.
先週からやるぞやるぞと言っていて延期になった臨界前核実験をアメリカがネ
バダ地下核実験場で実施.今回の一つのトピックスは,初めて実際の核弾頭用
に製造・備蓄されていたプルトニウムを使う実験であったこと.これを,米国
は,使用したプルトニウム量など実験内容の多くを軍事機密として非公開にす
る理由にしている.
→条約:CTBT,NPT
→Spadina
Journal Vol. 6 <1998/12/11-12/17>記事
ロシアが,8日極北のノバヤゼムリャ島の実験場で臨界前核実験を実施.
さらに,年末までにもう一回やると言っている.
ロシアは,1996年9月にCTBT(包括的核実験禁止条約)に調印している.今回の実験はCTBT違反ではないとロシアは言っている.
包括的核実験の趣旨は,実験の禁止なのではなく,核兵器廃絶ないしは削減への途上での禁止条約であると考えるのなら,ロシアの実験の合法,非合法は問題にはならない.
日本国政府は,インド,パキスタンの時のような非難の声明を出せるのか? 米露は共に,NPT(核不拡散条約)体制下にあっては,核保有を認められた国.であれば,現時点で保有している核兵器の性能チェックのためにこれら臨界前核実験は必要なのだという米露の見解をそのままのむのか?
→条約:CTBT,NPT
→Spadina
Journal Vol. 5 <1998/12/4-12/10>記事
国連軍縮長崎会議(国連軍縮局,国連アジア太平洋平和軍縮センター主催)が24日に始まった.会議日程は4日間.会場は,長崎市茂里町長崎ブリックホール.
国連軍縮会議は,1989年に京都で第1回会議を開いてから通算10回目.長崎では3年ぶり2回目.
明石康広島平和研究所長(前人道問題担当国連事務次長)が,基調講演で 「従来の国際的な核不拡散システムは,潜在的核保有国や核開発疑惑国に対する決め手を持たない欠陥システムだった」(【長崎新聞】より)と述べて,また,最終日の総括で,議長が,「核兵器の大幅削減と究極的な廃絶に短中期のビジョンや行動計画がない。この点についてこの会議は、核兵器国 により多くの責任があると考えた」(【中国新聞】より)と,核保有国の責任を強調するなど従来型のNPT体制堅持の確認とはちょっと違う...
シャーピング国防相が,ワシントンで,コーエン国防長官との会見の中で,「ドイツは北大西洋条約機構(NATO)の核戦略の中核的な要素に疑問を提起する意思はない」と述べ,米国とNATOが基本とする「核の先制使用」戦略にあえて異を唱えない姿勢を示した.
コーエンは,NATOの戦略のいかなる変更にも反対.つまり,「核の先制使用」戦略に触れてもらいたくない.
しかし,ボン,つまりドイツ政府は,先制「不」使用を言っている.
【毎日新聞】新たな核戦略の見直しで NATOと話し合いへ
http://www.mainichi.co.jp/old-news/199811/24/1125m070-300.html
http://www.hiroshima-cdas.or.jp/chugoku-np/News/Tn98112304.html
世界遺産国際ユースフォーラムというのがが22日から広島市で始まって,そこで,世界遺産に決まった(95年)原爆ドームと厳島神社について話あって,こういう遺産の意味を世界の子供たちに伝えましょうという話.ユネスコが開いている.オーストラリア,ルーマニア,ボリビアなど海外14カ国の中学 ・高校生や教師42人と、広島県内など国内の高校生ら約百人が参加.
なんのことはないニュースなのだが,ここで取り上げる意味は,そうしてこうやって,世界中の人々(たいてい最初子供だが,そのうち大人になる)が,厳島神社について何を考えるかはしらないが,ヒロシマについて学んでいく,実際とにかくatomic
bomb,ヒロシマ,ナガサキを知っている人は今も世界中に多くいるわけだが,さらに増える.このとき日本人はこれをなんと解説するんだろう.できるんだろうか?を気に止めておこうということ.私たちより先の世代は,私たちよりもっと非日本人と接触する機会が多くなるはず(唐突に鎖国でもしない限り).
この委員会で纏められ承認されたものが,12月の総会で裁可されるようだ.従って,その頃きっと新聞に出てくるのだろうと思われる.この時点ではフォローしている主要媒体はなかった.[11/20]
議題にあがっているのは,
「核ナシ世界に向けて:新しい提言の必要性」と呼ばれる提言とその他2つ.→国連総会第一委員会(軍縮と)
非核8か国提案
クリントン米大統領が,2日の演説で,イラクが国連大量破壊兵器特別委員会(UNSCOM)への査察協力停止を発表したことに反発し,軍事制裁の可能性を警告したもの. 1998年2月の空爆の危機から,結局変わっていない構図.
http://www.asahi.com/flash/finternational.html#finternational_822
この問題は,核兵器問題としてだけ取り上げるのは不適切であるのはいうまでもない.なぜなら,問題は,核の査察そのものではなくて,アメリカがどう中東,つまりはイスラエルと関係してゆくか,対処するか,どう出るかだろうから.
しかし,フセインを,いわゆる「ならず者」扱いすることによって,アメリカの一般的な国民は安心して,自分たちが最終的な核保有国であることを確かめているという効果があり,それによって,核廃絶,あるいは核不使用条約へのステップが遅れる,その意味では確かに核兵器問題ではある. →UNSCOMと,イラクvsアメリカ ,NEWSの項追加.
http://www.asahi.com/home.html
広島,長崎の原爆資料展がニューデリーで開かれた.主催は,日本とインドの労働団体とのこと.日本のそれは日本労働組合総連合会,いわゆる連合.
*リンクしたいのだが連合のホームページにはこの記事が見あたらない.
被爆の写真をインド,パキスタンにという試みは幾つかの団体でもやっている.
ホームページで確認されたものでいえば,例えば,原水協でもやっていた.「インド・パキスタンへ被爆写真を」というページがある.
http://www.twics.com/~antiatom/jp/jhome.htm
上記朝日の記事によれば,インド人の見学者からは,「なぜここで開くのか.アメリカやフランスでやればいい」といった抗議も多かったようだ.
アメリカでの原爆というのは,いろいろあるにせよ,催されている.さて,フランスはどうだったのだろうか?
ちなみに,日本からは現役の国会議員たちがこの廃棄2000プロジェクトの「サポーター」として名を連ねている.→廃棄2000
*** これは今回だけでは勿論なく,こうした団体ではよく行われている.活動の現場にいる人々はよく知っているだろうが,そうでない人々にとっては,いつでも新聞,テレビのニュースは結果しか伝えないので,なかなか目にするチャンスはないのでは?と思い,これからも間に合った分は伝えていきます.
http://www.kantei.go.jp/jp/souri/981001kokuren.html
核兵器に関する日本国の考え方,方針がまとまっているものとして核兵器関係のところだけ,取り出してあります.考え方の基本は,核不拡散体制こそ大事,ここからはじまっているようですが,歴史的にこの国の首脳たちがずっとこう考えてきたわけではないと思われます.なぜなら核不拡散体制の差別的な構図を苦々しく思っていた時代もあったから.
http://www.thenation.com/980928.htm
著者は,インド人の著名な小説家.小説家の書くものであるだけに,分析が簡潔でわかりやすいとはいえないのですが,民族主義的な熱狂がのあるところでは,なるほど核さえもそんな具合に扱われ,こんなことになってしまうだろう,という恐ろしさが確かに伝わります.
(要点のみ訳出)
http://www.foreignaffairs.org/
「米国が日本の核武装を望まない限り、同盟を維持して核の傘を提供し続けることは、米国の国益だ」と述べる.
http://www.smn.co.jp/insider/what/intro.html
『大国の脅しに屈しまいとするインドの気持ちを無視して,インドだけを非難することは私には出来ない』との梶山静六前官房長官の言を引きつつ,自民党長老と核の関係を書いている.70年に署名したNTPに関して,五大国だけに核保有を認めるような条約に従っていいのかといった議論により,批准までに6年を擁したという経緯が日本にはある.
http://www02.so-net.or.jp/~asaho/peace/jpn/say9802.html#6_8
平和への直言 インド,パキスタンの核実験によりNPT体制の矛盾が改めて暴露された格好になったのをうけて,日本の中で取り上げられた核を巡る議論を紹介.吉田康彦氏(埼玉大学教授)の,NTP体制の矛盾をそのままに,いわば核保有を認められない国に非難を向ける「特権持つ核保有国に説得力なし」(5/27:東京新聞)にはじまり,平岡広島市長の,「核抑止力に依存しない安全保障体制の構築」(1997年度平和宣言),後藤田元副総理の,「核の傘に依存する安全保障政策の見直し」(5/30:朝日新聞)へと言及.
http://www.smn.co.jp/insider/what/intro.html
パキスタンの核実験は,インド・パキスタンの地域紛争でもあるが,それ以上に,イスラム勢力が核を保有したことをも意味する. インドの場合と同様,パキスタンの場合も,核あるいはミサイルに関する技術は,公式,非公式を問わず米国からであるようだ.冷戦時代には,ソ連と親密であったインドを権勢する意味でパキスタンを支援する理由はあった.
核不拡散体制の維持・強化が不可欠であるとの認識がこの団体の基本である由.従って,それに反するパキスタンの行為は「極めて遺憾である」.
http://www.smn.co.jp/insider/what/intro.html
インドが地下核実験を強行した背景を分析している.NTP体制はもとより,未臨界核実験によって,CTBT体制にも抜け道が用意されている.それを用意した米国,フランスを一撃するインドというのは世界的規模ではそうだが,しかし一方,そのインドの行動によって敵愾心を燃やすパキスタンがどうでるのかは予測できない.ここに,極めて現実的な危機がある.インドでは,この一連の行動は熱烈支持.しかし,「核実験は自国への核攻撃」でもあるわけだから,自分たちの身に何が起こったかをしるにつれ,核実験反対の声もあがっている. この記事で注目すべきは,インドの核を誰が育てたのかという点.どうも,軍事技術は,アメリカからの移出であるようだ.この点を縷々述べた後で筆者は,インドの核開発は「米国がさんざん軍事技術を売り込んでインドの技術水準向上に貢献した上で,大国エゴ丸出しのCTBTを押しつけてインドが核実験を再開せざるを得ないようにし向けた結果だとも言えるのである」と言っている.
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/happyo/kaiken/kako/hodo9804.html#index
『Tne Nation』(ザ・ネイション)というアメリカの雑誌(週刊)が,1998年2月に,核兵器廃絶に関する現状を特集している.(目次と,要点のみ訳出してあります.全部やるつもりではいますが...)