<有事法制>防衛庁 「重要事態対応会議」で研究開始決定
【毎日新聞】
http://www.mainichi.co.jp/old-news/199901/30/0130m176-100.html
というわけである.
周辺事態である程度「危機」慣れしたところで,有事法制の登場,と映るわけ
だが,順番として考えれば,有事とはなんだ,が先にあって,その場合にどう
したらいいかのマニュアル,法が,例えばガイドラインというもののはずなの
だが,事態は逆に推移している.
また,本来的には,有事に関する考察と,現在取りざたされているガイドライ
ン関連法案は,まず別.つまり,有事は日本国の危機に際して日本国が決する
問題であり,ガイドラインは,日本国の危機であるよりもまずアメリカの認定
としての危機の話である.危機認定者が異なっている.
にもかかわらず,一緒くたであるのが,実際現状であるし,これを分けられな
いところに,一種の怪しさがあると私は考えている.
有事を考えることが,直ちに戦争したいんです,というわけではない.しかし
これが 基本的に忘れ去られているというか,タブー扱いされていた.軍隊モ
ノに興味を持つと平和的じゃないとみなされるのと同じように.で,このあ
おりでもって,有事を考える,一旦緩急あれば,を考える習慣がすっかり国
民的に無くなっているとは再々指摘される通りである.
この「習慣的空白」が正当化されるのはいうまでもなく,平和憲法を持ってい
るから,なのだろうが,平和憲法って,理念だから,そこに進むためには,水
面下ではドタバタ考えに考えていなければならなかったはずなのだが,水面
下,現実的な事態把握,はナシに等しいままここまで来た.今となっては遅
い.ちょっと考えてみれば,殴り合いのケンカより話し合い騙し合いのケンカ
の方が時間がかかるのは理の当然だとわかっただろうに,と,このへんはもう
遅い.
結果として,何事かあれば(つまり有事だが)
「アメリカがなんとかしてくれんでしょ」などという人が世の中に,本当にい
て,そのまま.
(考えてみえば,アメリカがなんとかしてくれると考える人は,平和憲法の理
念に賛同しているわけではないのだね.誰かがケンカの肩代わりをしてくれる
と思っているわけだから)
そういうわけで,とにかく,おそまきながらも,有事法制関係のインターネッ
ト上にあるページを見ると,
1.有事法制とは何か,どんなものが考えられるか
2.有事法制反対
に分けられる.本来的には,1→2,と議論は薦められれば法治国家としては
誠に好ましかったのだろうが,これまでのところの私の見解として,2は1を
概念的に整理した結果として導き出された反対とは見えない.有事=戦争=反
対,初めにありきである.だいたいみんな,「平和憲法を踏みにじるからいけ
ない」という始まりと結論である.
しかし,これには理由があって,理論的には1→2と進めばよいわけだが,現
実には,そんな法理論で国民的にもめたような国は多分歴史的には滅多に存在
していなくて,たいていみんなドサクサを繰り返し,半ば習慣的に,後に文言
として形成されたものであろうと思われる.実際時間と学習が必要なテーマで
はあるだろう.
日本国におけるこのテーマは,国家総動員法なんていう,なんかもう身もフタ
もないような法律下で戦争してた状態から,いきなり,なんの脈絡もなく,戦
争ダメです,になったという経緯から,戦争反対が,イコール,国家的統制へ
の反対になっている側面が非常に強い.
ここで欠けているのは,日本国にとって有事とは何であったかの考察である.
現状,有事は戦争であるよりもまず,国家統制としてしか了解されていない.
しかもそれが,有事が先だったか,国家統制が先だったかさえよくわからな
い.考察していないから,あるいはその結果に対する国民的な合意がないか
らである.
2に分類されるページなどは,読んでいると,戦争そのものに反対していると
いうよりは,言語統制とか,自治体の権限剥奪とか,市民的自由をあらかた
かっさらわれる事態に反対しているというケースが多くみられる.この「感
じ」は,かなりの程度国民的に了解できるものと思われる(こうした運動に参
加するしないに関わらず) .この「戦争」に相手はいない.
それは,確かに,戦争の極限状態まで行けばその通りなのだろうが,必ずしも
すべての戦争がそういう「統制」一本槍であるというわけではない(そうでな
かったら,あのアメリカの戦時中はなんなんだ? 1945年8月の雑誌には快
適そうな生活が見える.ポマードの広告だのタバコの広告が載ってるぞ).
また,アメリカやヨーロッパのいわゆる先進国が想定している戦争は,少なく
とも,それぞれ当該市民にとっては,そういうものではない.ただ,基地や協
力国,より現地に近いところを通して,そこに不自由を押しつける,それが現
在の戦争だと見える. イラクに空爆しかけて,一般のアメリカ人に何の関係も
ないのがこれをよく表している.北朝鮮でもそうだろう.困るのは日本と韓国
だけだろう.
そして,日本という国家は,アメリカにとって基地になりつつある.
この時,日本の少なからぬ人が反対しているのは,何なのだろうか? むし
ろ,戦争ではなく,基地の国になってしまう(市民的自由を剥奪される)こ
と,と,その先,その統制が,アメリカのせいであろうとなかろうと,日本国
の意志になってしまうことなのではなかろうか.
となると,実は,50年後生大事にやってきた平和憲法の理念というのは,あ
まりにも遠い話であったことになる.自らが戦争さえしかけられない(基地は
戦争をしかけない)地位にありながら,戦争は止めましょうと言っていたこと
になる.なんか悲しいけど.
(もちろん,戦争という事態がどこにも起こらないようにするにはどうしたら
いいかを本当に考えている人もいるだろうが,意図の清潔さはともかく,戦争
という事態,つまり有事を考察することなく,有事でない事態を考えることは
できないと思われる)
こう考えてくると,なぜ一体,今有事法制を叫ぶ人々がいるのかが少し見える.
有事法制の研究をしましょうではなく,ガイドラインと抱き合わせで有事法制
なのか,が.
周辺事態関連法案の議論を巡って,「周辺事態」という危機の概念が了承さ
れ,その危機があることも了解され(北朝鮮のおかげでこの概念了解は消えな
い),すなわち「有事」が意識される.有事法制へと議論は拡大するだろう.
そうなると,恐らく,市民生活の一般的自由を奪うことになるだろう(程度問
題はあるにせよ,危機,戦時中なんだし,基地のある場の市民なんだから).
こうなった時,当初,ガイドラインという外圧によって統制を加えたという事
実は,周辺事態→有事,それは日本国にとって危機と,すり替えられる.
そうなれば,外から言われているからだけではなく,だって「私たちの」危機
なのだから,という意識が構築される.少なくとも主体となる国家の意志はそ
ういうものになる. 危機は現前し,有事は日常的になる可能性もある.
すると,誰も反対できなくなる...でもって,諸々のことがそうであったよ
うに,誰がそんなことをしたのかよくわからないままに,統制国家が完成す
る.今有事法制をしかつめらしい顔をして考えるプロジェクトのおじさんたち
の意図は,どうもこのへんにあるのだろうと見える.
問題はこの先だ.そうして,統制が取れる,管理がかなり完璧にできる国家体
制にして何をするか,だ.
周辺事態関連法案の成立と共に,実際上,かなりの程度日本はアメリカの基地
になる.これが最終目的だという人々はそれでもいいのだが,多くの日本人は
そこで「従順」なままいられるだろうか? 外圧変じて意志となった有事の統
制下で,人々は何を考えるだろうか?
最悪のシナリオは,敵探し.暴発するための.
「日本人」とは,自らの意に染まぬことは,その場「耐え」ても,結局「カ
ケ」に出る人々なのじゃないのだろうか?少なくとも,歴史はそう教えている
(真珠湾しかり,明治維新しかり,多くの場合展望なく爆発する傾向にあるの
ではないのか?).
特定の個人の意図であるとないとにかかわらず,周辺事態関連法案から有事法
制,日本の基地化は,この「耐え」の期間を作りだしていることになるのでは
ないのだろうか.
別の言い方をするなら,周辺事態法案成立によって,「こんなことになった
のぉ!知らなかった!!」という国民の驚きが来て,「冗談じゃない,かくな
る上は」を待つことになる.自分で圧搾している,自分で自分の首を締めてい
る.少なからぬ人々が,この勢いを待っているのじゃなかろうか...
しかしここには,太平洋戦争(その前のドサクサ侵略じゃない)のような大義
名分はない.白人支配に対する非白人の戦いという図式は,50年前にはそれ
なりに説得力もあったかもしれない.しかしもはや今の日本にはあてはまらな
い.じゃ,何に対して爆発する? それはわからない.しかし,圧搾された空
気にとっては,爆発こそが目的だから,大儀名分の有無,損得の有無などどう
でもよい.
以下,参考になりそうなページ(勝手に紹介させてもらってます)
http://www.iris.dti.ne.jp/~rgsem/Default.html
有事戦略研究会
『純粋に学術的な』研究会だそうですし,法概念から考え出しているところを
みると,そうなんですね.なるほどと思わされるものが一杯あります.
同じHPの「日本に予測される代表的な(軍事的)有事のパターン」
http://www.iris.dti.ne.jp/~rgsem/yujitype.html
どの可能性も捨てずに考察しようとの考えの現れとして,非常に読みやすいで
す.このページおすすめ.短いし.
周辺事態法案全文
http://www.osk.3web.ne.jp/~btree/catch/yuji/doc/syuhen.htm
「キャッチピース」のサイト.有事立法,ガイドラインに行く前に,今日本で
起こっている基地問題についてのいろんな資料がある.
このHPの中の,
防衛庁報告,有事法制の研究について
(1981年と1984年のもの)
http://www.osk.3web.ne.jp/~btree/catch/yuji/doc/Yuji1.htm
http://www.osk.3web.ne.jp/~btree/catch/yuji/doc/Yuji2.htm
■反対運動のサイト&記事
有事立法を許さない府中市民の会
http://www.fsinet.or.jp/~red/yuji2/index.htm
1999/02/07
ガイドライン関連法反対求め署名 広島の2団体(広島県原水協,被団協)
【中国新聞】
http://www.hiroshima-cdas.or.jp/chugoku-np/News/Tn99020705.html